長時間の座り仕事で動かない肩甲骨をケア:簡単ストレッチと習慣
座り仕事で「動かない肩甲骨」になっていませんか?
一日中パソコンに向かっていると、知らず知らずのうちに体が固まっていませんか?特に、肩や首のつらさを感じやすい方は、もしかしたら肩甲骨の動きが悪くなっているのかもしれません。
座り仕事では、腕を体の前に固定してキーボードやマウスを操作することがほとんどです。この姿勢を長時間続けると、本来自由に動くはずの肩甲骨が背中に張り付いたように固まってしまいます。肩甲骨が動かないと、その周りの筋肉が緊張し、肩こりや首のつらさだけでなく、姿勢の崩れ(猫背など)にもつながることがあります。
この不調を和らげ、より快適に過ごすためには、固まった肩甲骨周りを意識的にケアすることが大切です。この記事では、座ったままでも、また短時間で手軽に行える肩甲骨周りのセルフケア方法をご紹介します。ぜひ、休憩時間や仕事の合間に試してみてください。
なぜ座り仕事で肩甲骨が固まるのか
私たちの肩甲骨は、背中の上部に浮かぶように位置しており、腕や体幹の動きに合わせて様々な方向にスライドしたり回転したりする、非常に自由度の高い骨です。この動きがスムーズであることで、肩や腕の広範な動きが可能になり、肩や首への負担を分散しています。
しかし、長時間のデスクワークでは、以下の要因で肩甲骨の動きが制限されがちです。
- 腕を体の前で固定する姿勢: パソコン作業中は、腕を前に伸ばし、肩甲骨をやや外側に開いた(または前に出した)状態で固定します。
- 猫背になりやすい: 画面を覗き込むような姿勢は、背中を丸め、肩甲骨が開きっぱなしの状態を固定化させます。
- 筋肉の緊張: 同じ姿勢を続けることで、肩甲骨を動かすための僧帽筋、菱形筋などの筋肉が緊張し、硬くなります。
これらの要因が重なることで、肩甲骨は本来の滑らかな動きを失い、周囲の筋肉も硬く凝り固まってしまいます。これが、肩こりや背中の張りの原因の一つとなるのです。
座りながらできる!肩甲骨ケアの簡単ストレッチ
ここでは、オフィスや自宅で椅子に座ったまま、または立った状態で短時間で行える肩甲骨周りのストレッチをご紹介します。呼吸を止めずに行うことがポイントです。
1. 基本の肩回し
最も手軽にできる肩甲骨ケアです。肩甲骨全体を大きく動かす意識で行いましょう。
- 椅子に座り、背筋を軽く伸ばします。両腕は体側に自然に下ろします。
- 息を吸いながら肩をすくめるように上げ、次に息を吐きながらゆっくりと後ろに回し下ろします。肩甲骨が背骨に寄っていく動きを感じます。
- この後ろ回しを10回繰り返します。
- 次に、息を吸いながら肩を上げ、息を吐きながら前に回し下ろします。肩甲骨が背骨から離れていく動きを感じます。
- この前回しを10回繰り返します。
ポイント: 肩だけでなく、肩甲骨自体を背中で大きく回すようなイメージで行います。力を抜き、リラックスして行いましょう。
2. 肩甲骨寄せストレッチ
肩甲骨を背骨に引き寄せる動きを意識することで、肩甲骨周りの筋肉(菱形筋など)にアプローチします。
- 椅子に座り、背筋を伸ばします。両肘を曲げ、手のひらを内側に向けて体側に引き寄せます。
- 息を吐きながら、両肘を体の後ろに引くようにして、肩甲骨を背骨に強く引き寄せます。胸を軽く張り、肩甲骨同士をくっつけるイメージで行います。
- この状態を5秒キープします。
- 息を吸いながら、ゆっくりと肘と肩甲骨を元の位置に戻します。
- これを5〜10回繰り返します。
ポイント: 肩がすくまないように注意し、肩甲骨を「寄せる」動きに集中します。
3. 腕回しストレッチ
肩甲骨の動きと連動して腕を大きく回すことで、肩甲骨周りの筋肉を広範囲に動かします。
- 椅子に座るか、立った状態で、片方の腕を前にまっすぐ伸ばします。
- 息を吸いながら、腕を天井に向かって上げ、耳の横を通って後ろに大きく回します。肩甲骨が肋骨の上を滑るように動くのを感じます。
- 腕を大きく回して元の位置に戻るまで、ゆっくりと呼吸を続けます。
- この動作を5〜10回繰り返します。
- 反対の腕も同様に行います。
- 慣れてきたら、両腕を同時に前回し、後ろ回しで行ってみましょう。
ポイント: 腕だけで回すのではなく、肩甲骨から動かすような意識で行います。無理のない範囲で、できるだけ大きな円を描くように回します。
4. 体側伸ばしと肩甲骨ストレッチ
体側を伸ばしながら肩甲骨周りにもアプローチできるストレッチです。
- 椅子に座り、背筋を伸ばします。
- 左手を椅子の座面やアームレスト、または太ももの上に置きます。
- 右手を天井に向かってまっすぐ伸ばします。
- 息を吐きながら、左側へ体をゆっくりと倒し、右の体側を伸ばします。このとき、右手の指先を遠くに引っ張るように意識し、右側の肩甲骨が肋骨から持ち上がるような感覚を持ちます。
- 体側が気持ちよく伸びるところで数秒キープし、深い呼吸を続けます。
- 息を吸いながら、ゆっくりと体を起こし、腕を下ろします。
- 反対側も同様に行います。左右それぞれ3回程度繰り返しましょう。
ポイント: 体を前に倒したり後ろに反ったりせず、真横に倒す意識で行います。肩甲骨が「開く」または「広がる」感覚を意識します。
不調を予防するための日頃の習慣と意識
セルフケアは、つらい症状を和らげるのに役立ちますが、根本的な予防には日頃の習慣と意識が重要です。
- こまめな休憩とストレッチ: 一時間に一度は立ち上がり、簡単な肩甲骨回しや伸びを行いましょう。短時間でも体を動かすことが凝り固まりを防ぎます。
- 正しい座り姿勢の意識: 深く腰掛け、骨盤を立てるように意識します。肩の力は抜き、リラックスさせます。ただし、完璧な姿勢を長時間維持するのは難しいため、良い姿勢を意識しつつ、こまめに体勢を微調整することが現実的です。
- デスク環境の調整: 椅子と机の高さ、ディスプレイの位置などを調整し、肩や首に負担がかかりにくい環境を作りましょう。ディスプレイは目線の高さかやや下に来るように調整すると、猫背を防ぎやすくなります。
- 肩甲骨を「使う」意識: 日常生活の中で、物を取るときなどに肩甲骨から動かすことを少し意識してみましょう。普段使わない肩甲骨周りの筋肉が活性化されます。
まとめ
長時間の座り仕事は、肩甲骨の動きを制限し、肩こりや首のつらさ、猫背など様々な不調の原因となります。しかし、ご紹介したような簡単で手軽なストレッチや、日頃のちょっとした意識の変化で、肩甲骨周りの凝りを和らげ、不調を予防することが可能です。
休憩時間などを活用して、今日から「動かす」習慣を取り入れてみませんか。体の変化を感じながら、無理なく継続していくことが、快適な座り仕事ライフへの第一歩となります。