座り仕事で固まる脇(広背筋など)をケアする 簡単ストレッチ&習慣
長時間パソコンに向かって座り続けていると、肩や首だけでなく、意外な場所にも不調を感じることがあります。その一つが、脇の下から背中にかけてのエリア、いわゆる「脇周り」の固さや張りです。
この脇周りの固さは、単なる不快感にとどまらず、肩甲骨の動きを悪くしたり、巻き肩につながったり、さらには肩こりや呼吸の浅さの原因になることもあります。
この記事では、座り仕事でなぜ脇周りが固まりやすいのか、そして休憩時間や仕事の合間に座ったままでも手軽にできる、具体的なセルフケア方法をご紹介します。日頃から意識したい予防習慣もお伝えしますので、ぜひ参考にして、体の不調を和らげ、快適に座り仕事ができる体を目指しましょう。
なぜ座り仕事で脇周りが固まりやすいのか?
長時間の座り仕事では、無意識のうちに体が前傾したり、猫背になったり、腕を常に体の前で使う姿勢が続きます。このような姿勢は、脇の下から背中にかけて広がる大きな筋肉である「広背筋(こうはいきん)」や、肩甲骨の周りにある「大円筋(だいえんきん)」「小円筋(しょうえんきん)」といった筋肉を縮こまらせてしまいます。
これらの筋肉が長時間縮んだ状態が続くと、硬くこわばってしまい、本来スムーズに動くべき肩甲骨の動きを妨げます。結果として、腕を上げにくくなったり、肩甲骨を寄せたり開いたりする動作が制限され、肩や背中全体の不調につながるのです。
また、脇周りの筋肉が硬くなると、肋骨の動きも制限されやすくなり、呼吸が浅くなる原因にもなり得ます。
座ったままできる!脇周りの簡単セルフケア
休憩時間や気分転換したいときに、すぐにできる簡単なストレッチとマッサージをご紹介します。座ったままでも無理なく行えるものを選んでいます。
セルフケア 1:体側伸ばしストレッチ
脇の下から体側、そして腰にかけての伸びを感じられるストレッチです。
- 椅子に座ったまま、両足を床につけて安定させます。
- 右手で椅子の座面や縁を掴みます。
- 息を吸いながら、左腕をゆっくりと頭の上に持ち上げます。
- 息を吐きながら、右側(右手を掴んでいる方)へ体をゆっくりと倒していきます。この時、左の脇腹から体側が気持ちよく伸びるのを感じましょう。体は前かがみにならないように注意し、真横に倒すイメージで行います。
- 自然な呼吸を続けながら、この体勢で15秒から20秒キープします。
- 息を吸いながらゆっくりと体を起こし、腕を下ろします。
- 反対側も同様に行います。
- ポイント: 脇の下から骨盤にかけての大きな筋肉(広背筋など)が伸びているのを意識しましょう。無理に倒しすぎず、気持ち良い範囲で行ってください。
セルフケア 2:腕回し&肩甲骨寄せ
腕を回したり肩甲骨を動かすことで、脇周りを含む背中側の筋肉を活性化させます。
- 椅子に座ったまま、背筋を軽く伸ばします。
- 両腕を下ろし、リラックスします。
- (腕回し) 息を吸いながら、両腕を前に回します(肩から大きく回す)。前回しを5回行います。
- 次に、息を吸いながら、両腕を後ろに回します(肩から大きく回す)。後ろ回しを5回行います。腕を後ろに回す際に、肩甲骨を背骨に引き寄せるような動きを意識すると、脇周りの筋肉も連動して動きます。
- (肩甲骨寄せ) 息を吸いながら、肩甲骨を背骨に引き寄せるように胸を軽く張ります。両肩を後ろに引くイメージです。
- 息を吐きながら、肩甲骨を外側に開くように背中を軽く丸めます(猫背にならない程度に)。
- この肩甲骨の寄せたり開いたりの動きを5回から10回繰り返します。
- ポイント: 腕を回すときは、肩甲骨の動きも意識しましょう。肩甲骨を寄せるときに、脇の付け根から背中にかけての筋肉が使われるのを感じられます。
セルフケア 3:脇の下マッサージ
固まりやすい脇の下周辺を直接ほぐすマッサージです。
- 椅子に座ったまま、リラックスします。
- 片方の腕を軽く上げ、反対側の手の指を、上げた腕の脇の下に当てます。
- 脇の下にはリンパ節も多く集まっていますが、ここでは筋肉の固さを和らげることに着目します。指の腹を使って、脇の下から胸側、背中側にかけて、硬くなっている部分を優しく探します。
- 硬さや張りを感じる部分が見つかったら、そこに指を当てて、小さく円を描くように優しく揉みほぐしたり、軽い圧を加えながらゆっくりと押したりします。強い痛みを感じる場合は、無理せずソフトに行いましょう。
- 呼吸を止めず、リラックスしながら1分程度行います。
- 反対側も同様に行います。
- ポイント: 強い力で押さえすぎないように注意しましょう。特に脇の下の皮膚はデリケートです。筋肉の固さを和らげるイメージで、心地よい強さで行ってください。
脇周りの不調を予防するための習慣・意識
セルフケアも大切ですが、日頃の習慣やちょっとした意識で、脇周りの固まりを防ぐことができます。
- こまめに休憩を取り、立ち上がる: 30分に一度など、時間を決めて一度立ち上がり、軽く体を動かす習慣をつけましょう。座りっぱなしの時間を減らすことが重要です。
- 座り姿勢を意識する: 深く腰掛け、骨盤を立てるように座ることで、体が前傾しすぎるのを防ぎます。また、作業中に時々、意識的に胸を軽く開き、肩甲骨を寄せるようにすると良いでしょう。
- 腕や肩の位置に注意: パソコン作業中、腕が前に出すぎたり、肩が内側に入りすぎたりしないように注意します。肘が90度程度になるように椅子の高さや机との距離を調整し、脇に適度な空間ができるように意識しましょう。
- 定期的に軽いストレッチや体操を行う: 上記で紹介したセルフケアを、休憩時間のルーティンに取り入れるのがおすすめです。短時間でも継続することで、固まりにくい体を維持できます。
まとめ
長時間の座り仕事は、肩や首だけでなく、脇周りの筋肉にも負担をかけ、体の不調を引き起こすことがあります。脇周りの固まりは、広背筋などの筋肉が長時間縮こまることで起こり、肩甲骨の動きの悪さや肩こり、呼吸の浅さにつながる可能性があります。
ご紹介した「体側伸ばしストレッチ」「腕回し&肩甲骨寄せ」「脇の下マッサージ」は、オフィスや自宅で座ったままでも手軽に行えるセルフケアです。これらのケアを習慣にすることで、脇周りの筋肉の緊張を和らげ、血行を促進し、肩甲骨の動きをスムーズにすることができます。
さらに、こまめな休憩や正しい座り姿勢の意識、定期的な軽い運動といった予防習慣を取り入れることで、不調を未然に防ぐことにも繋がります。
これらのセルフケアや習慣は、すぐに大きな変化をもたらすものではありませんが、継続することで少しずつ体の状態が変わっていくのを実感できるはずです。無理のない範囲で、ご自身のペースで続けてみてください。もし、痛みが強い場合やセルフケアで改善が見られない場合は、専門家にご相談されることをお勧めします。